顎変形症がくへんけいしょう

顎変形症がくへんけいしょう

病気の説明

顎変形症がくへんけいしょうとは、上下のあごの骨の大きさや形、位置などの異常、バランスの異常などによって生じる状態の総称です。たとえば、下あごのみが大きくなると、顔つきは下あごが突き出た状態となり噛み合わせは受け口になります。このような状態は下顎前突症かがくぜんとつしょうといって顎変形症の一つです。顎変形症になると、噛み合わせが悪いために食べ物が噛めなくなったり、口の中の変形によって言葉が正しく発音できなくなったりします。同時に、顔の形に変形を生じるために、精神的ストレスの原因となる場合もあります。
顎変形症の原因は様々ですが、多くの場合、明らかな原因は分かっていません。しかし、身内にも同じような症状の人がいたり、人種の違いによって生じやすい顎変形症があることから遺伝的な影響が大きいと考えられています。このような場合は、一般的にあごの変形は成長に伴って思春期以降に徐々に明らかになります。
一方、原因として分かっているものとして、唇裂・口蓋裂などの生まれつきの顔・あごの病気、そして顔・あごの骨折に伴うものなどがあります。生まれつきの病気が原因のあごの変形は幼児期・小児期からすでに明らかになっていることもあります(生まれつきの顎の変形参照)。

様々な顎変形症

診断

顎変形症では、反対咬合や上顎前突といった不正咬合などの噛み合わせの状況を詳細に評価する必要があり、まず矯正歯科での診察・検査が必要になります。通常、頭部のレントゲン撮影や噛む運動機能の検査が行われます。一方、手術を担当する形成外科や歯科口腔外科では、CT検査などを行い変形部位の診断と評価を行います。

治療

軽度の顎変形症は矯正歯科治療のみで対処可能な場合がありますが、上あご、下あごの骨に変形があるものでは手術により変形を改善させる治療が適しています。手術の時期は、通常は成長が終了した後、つまり16歳から18歳以降です。これまでは手術に先立って矯正歯科治療を行う方法がよく行われてきましたが、最近になり手術を先に行う方法も症例によっては可能になってきています(自費診療となります)。手術は全身麻酔にて行われ、上あごや下あごの骨を切って理想的な位置に移動させて固定します。通常は、口の中から上あごと下あごを手術するため顔にはキズがつきません。手術後には顔が腫れますが、必ずひいてきますので安心してください。手術が終わった後、手術前に矯正歯科治療を行った場合も、そうでない場合も、再び歯科矯正治療は必要です。これをしっかり行わないと変形が再発することがあります。

顔面非対称に対する骨切り術
骨切り固定後

著者

東北大学大学院医学系研究科外科
病態学講座形成外科学分野
教授 今井 啓道

東北大学病院 形成外科

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